活字を1本買いに行く♫

日本には現在も数軒の活字店があり、誰でも新品の活字を購入する事ができます。

活字店には活字を作るための「鋳造(ちゅうぞう)設備」があり、カチャ・カチャ・カチャと町工場ならではのリズミカルでなつかしい音を立てながら活字が作られていきます。

当社にも平成になる頃まで、鋳造設備がありました。書籍を組むには大量・多種の活字が必要なので、活字店で購入するより社内で鋳造現場を持つ方がコストダウンになったのでしょう。

しかし現社員で鋳造現場の事を知る人はほとんどいません。

今回は今も活字を購入できる(株)築地活字(神奈川県横浜市)と(有)佐々木活字店(東京都新宿区)をご紹介します。

(株)築地活字さんは活字界で格別の連想を抱かせる、東京築地活字製造(昭和13年廃業)の流れをくむ活字店です。永きに渡る歴史の中では震災や戦争を乗り越えました。

築地活字社内

万年自動鋳造機と八光自動鋳造機がずらりと並ぶ築地活字社内

現在は鋳造見学体験会を開催したり、新聞や印刷・デザイン関連の本でもよく紹介され、活版印刷の火を消さぬよう日々ご活躍の会社です。また昨年は「多機能型活字ホルダー」を開発され、秋から販売を開始されました。活字ホルダーは活字を差し込みスタンプのように使え、また、ハンマー打ちもできるので、昨今要望の多いレザー製品への刻印も可能となり、新たな活字需要の拡大を見込んでおられます。

活字ホルダーの広告

活字ホルダーの広告

筆者は2011年1月の築地活字・活版活字鋳造見学会に参加させていただきました。

社員の大松さんにご指導いただきながら、自分も名前の活字を鋳造で作り、その活字を使って名刺を印刷する内容です。お土産に自作の活字と名刺をいただきました。

鋳造見学体験会

鋳造見学体験会の様子

(有)佐々木活字店さんは活字と印刷材料の販売店で、インキなどの活字版用諸資材も入手でき、「困ったら佐々木さんに聞け!」と紹介されるほど、都内で淡々と、また脈々と、活版印刷を支え続けている会社です。

佐々木活字店

佐々木活字店

また2011年8月は佐々木活字店を訪問し、メタルベース(活版印刷用の土台)3,150円と活字「@」5本で200円と名刺用紙を購入しました。

その際、鋳造機の動くなつかしい音に気づき、厚かましくも2階にある鋳造現場を見学させていただきました。大阪からやってきた珍客にも親切に対応いただき、今ではまず見ることのできないモノタイプ鋳造機(文選と鋳造を同時にこなす機械)や活字の腹(土台部分)が扇形にできあがる特殊鋳造機などを見せていただき感激しました。

永年使われた機械は部品が入手困難なため、使わない機械も部品交換用として大切に保管されています。

道具

作字の為に活字を削る道具(佐々木活字)

道具

飾り罫を切る道具 新品の販売もあります。

一般的な活字と特殊な活字

左:一般的な活字 右:特殊な活字

扇形

特殊な活字は腹部分が扇形なので、隣り合わせで組むと円形になり、筒の内側に製造番号などを印刷する為の印刷機に使用されるそうです。